心を込めて「紙」を編む 若き工芸作家、あみがみ屋 新-arata-竹内新さんが作品に込めた思い

未分類

「紙」で作品作りを行う工芸作家・竹内 新さん

竹内 新(たけうち あらた)さんは「あみがみ屋 新-arata-」の屋号を掲げ、「紙」でカバンやブレスレットなどの作品を作っている若き工芸作家。現在は、千葉県いすみ市を拠点に作品作りに取り組んでいます。

新さんが作る作品は、すべて手編み。一点ものを編む際はお客さんの要望をしっかり聞きとり、それを反映させて作品を仕上げています。

製作する作品の種類は、名刺入れ、ショルダーポーチ、ブレスレットなどの小物類、そして一点物の背負いかごと手提げかご。素材である色とりどりの紙とカッターを使い、作品を編み上げていきます。

「石畳編み」という編み方で編まれたカバン

作品作りは、日頃思いついたアイデアやデザインをメモすることから始めているそう。

実際に作品に取り掛かる際は、それらのメモから具体的な作品イメージをイラストに起こし、図面へと製図。製図をもとに材料の紙の束からはさみで切り出し、デザインに沿って編み上げていきます。編み上がったら、霧吹きをかけ湿らせて整形。そのあと天日干しで約一日乾かしたら、抗菌・撥水効果のある柿渋液を塗り、さらに半日乾かして、やっと完成します。

作品の販売は、ホームページからメールで注文を受け付けする形式。また、知り合いを通じた対面での販売も大切にされています。

新さんがいすみ市で拠点とする場所の一つ、コワーキングスペース「hinode」

新さんの作品づくりの一番の特徴は、「物を長く大事に愛用してほしい」という固い信念をもって取り組んでいるところ。そのために、「紙」という自然環境に配慮した素材を使い、ひとつひとつ、思いを込めて手で編んでいます。撥水対策として、ニスではなく伝統的な柿渋液を使っていることも、そのこだわりから来ているそう。

新さんは、どのような過程を経て、「紙」を素材にして思いを込めた作品作りをするようになったのでしょうか。

根底にあったのは「表現する喜び」

ー新さんが、紙を使った作品作りをするようになったきっかけを教えてください

おおもとのきっかけは、「表現すること」が幼いころから身近にあったことです。僕は3歳から10歳くらいまで地元の造形教室に通っていて、そこで絵を描いたり、粘土でものを作ったりしていました。造形教室だけでなく、地元の教会の子ども聖歌隊にも参加していて、「歌うこと」も表現の一つだった。

でも10歳くらいの頃に、親の仕事の都合で大阪から広島へ転校したんです。結果、それまで習っていたことがチャラになってしまった。12歳の頃に再び大阪へ戻ってきて、また絵を描いたり教会に行ったりしましたが、以前ほどの関わりの深さはありませんでした。

「表現すること」から離れたあと、自分自身がなんとなく良くない方向に進んでいる感じがして、精神的に行き詰まりを感じるようになりました。その状態が続いたのが19歳くらいまで。一度落ちるところまで落ちて、これじゃ、自分アカン、ってなった。なぜ行き詰まっているのかを振り返ったら、表現することがなくなったからだ、と気づいたんです。

そのあと、教会に通いなおしたり、ふたたび絵を描いたりし始めました。このとき、「表現することが自分の喜び」だと自覚を持ちました。でも、まだ自分の思いを表現するふさわしい方法が何なのか、確信が持てずにいましたね。

「紙」との出会い、そして確信

表現する素材としての「紙」との出会い

ー表現する素材としての「紙」とはどのように出会ったのですか。

実家の母が、今僕が作っているのと同じ「紙」の素材で、和装に合う作品作りをしていて。「紙」が直感的にいいと感じたこと、そしてそのときに「やれるときにやりたいことをやろう」というマインドが強くなっていたことから、すぐさま取り組み始めました。

いいと感じた理由は、「かご」という作品は形あるものとして表現できるので、作品を編み上げるという明確なゴールに向かって、心を込めて取り組めるから。それに、みんながやっていないことをするのが好きなので、同じ素材でかごを作る同世代の人が少ないのも良かった。それ以降、作った作品を自分で使ったり、友達にあげるようになりました。

新さん自作のカバン。左は新さん本人が愛用しているもの。

「やりたいときにやれることをやろう」というのを説明すると、実家に戻る前にバックパッカーとして海外を旅していたんです。現地の人に近い距離感で旅をして、自分にとって大きな経験になった旅でした。でも、ちょうと僕が帰国するタイミングで、新型コロナウイルスが流行し始めた。

僕はちょうどタイミングよく旅していろんなものを得て帰ってこれたけど、時期がずれていれば行けなかったし、帰るのも大変になっていたかもしれない。そう思ったら、やりたいと思ったことはやれるときにやるべきだ、と強く思うようになったんです。

「紙」で表現することへの確信

ー本格的に「紙」を使った作品作りをはじめたきっかけを教えてください

和歌山のみかん農園さんから、みかん籠づくりを依頼されたことがきっかけです。そこで、「紙」を使った作品づくりに確信を持つようになりました。

2020年の秋に和歌山に行って、知り合いのみかん農園を尋ねました。僕はそこに自分で編んだカバンをしょっていったんですが、農園の方が「それ、いいね!」と褒めてくれたんです。そのとき、農園さんは贈答用の田村みかんに、みかん籠もセットで販売したいと考えていたようで。そこを僕が訪れたので、みかん籠作りを依頼してくれました。

みかん籠作りから生まれた丸籠

依頼を受けたのはいいものの、最初はどうやって丸い形を作るのか分からなくて、試行錯誤を重ねました。そもそもみかん籠の作り方が一般的に出回ってなかったんです。受注した後、3か月かけてみかん籠の作り方を一から考案して、そのあとの3か月間はみかん籠をひたすら編み続けました。結局、試作品で作ったのは20個、納品したのは80個だったかな。

はじめて「仕事」として作品作りを迫られたので、製作した3か月間はとても濃い時間でした。この経験のおかげで、「自分のやりたいことはコレだ」と確信が持てたんです。

伝えたいのは「物」を大切にする心

ー新さんにとって、「紙」で作品を編むとはどういうことですか

僕にとって「紙」で作品を編むということは、自分と対話することなんです。「紙」を編むことで自分自身と向き合い、自然と真理が湧いてくるっていうのかな。作品づくりを通して、大事なことをたくさん学ぶことができました。

例えば、何事も基礎が大事だということや、軽はずみで行動しないということ、そして物事の本質を見極めることの大切さ。どれも基本的だけど重要なことですね。

2色の紙で編まれたブレスレット

みかん籠づくりで基礎的なことが押さえられたおかけで、そのあとは何でも編める、くらいの気持ちになりました。実際、ブレスレットやスマホケースなど、同じ素材でほかの人が作っていないような作品にも取り組むことができるようになった。

ー新さんが作品作りで大切にしていることや思いを聞かせてください。

僕は、物を大切にするきっかけになるような作品作りを目指していて、そのために直接お客さんと会ってコミュニケーションすることを大切にしています。

僕のこの思いは、「いいものを長く使う」という父の姿勢に影響を受けていると思います。ただ安いから、という理由で早いサイクルで物が捨てられることに昔から違和感はありました。それだと、自分のこだわりのアイテムを持つことはできませんよね。

物は大切に長く使ってほしいし、そうすることで環境問題を考えるきっかけにもなってほしい。僕が素材として「紙」を使っているのも、柿渋液を使っているのも、自然由来のもので自分の思いとマッチするからです。

細く切った紙で編まれたスマホケース

また、そのような作品を作るには、お客さんと直接会ってコミュニケーションをとることが大事だと考えています。相手の顔が見える関係だからこそ、作品に思いを込められるし、その人に対して全身全霊で心を込めて作品を編むことができる。心のこもった作品だからこそ、大事に使ってもらえると思っています。

ただ短いスパンで使って終わり、ではなく、長く愛用してもらうことでストーリーが生まれるような物づくりをしていきたいですね。僕の作品を手に取ったお客さんにはぜひ、世代を重ねて愛用してほしいです。


新さんのホームページ・SNSはこちらから↓
【あみがみ屋 新-arata-】https://www.amigamiya.com/
【Instagram】https://www.instagram.com/amigamiya_arata/?hl=ja

(執筆:有馬里美)
(写真:つちまる@tcdtkhs

コメント

タイトルとURLをコピーしました